小説「ほしのはじまり―決定版 星新一ショートショート」星新一

星新一を振り返るのに最適

新井素子・編の、「網羅」を目指した、星新一ショートショート集です。
中学生時代に、ほとんど読んだはずの星新一先生ですが、久々に読み返したくなり、手に取ってみました。

今読んでも、まったく色あせていないですね。
アイディア勝負の作品と、読みやすい文章が、とても心地よいです。

ショートショートなので、一話一話が短いのも、ありがたいです。
ちょっとした合間に読むのに、ちょうど良かったです。
(本自体は分厚いので、気軽な感じではありませんが)

星新一先生によるエッセイ「ほしのくずかご」と、新井素子先生による解説も収録されていて、
先生の人となりを知ることができたのも嬉しかったです。

「四で割って」「盗賊会社」「午後の恐竜」…
完全に忘れていてもう一度驚かされた作品に、展開を完全に覚えていた作品。
どちらの場合も、文句なしに楽しめました。

もう一度、ぜんぶ読み直したいですが…1001作品!?


ほしのはじまり―決定版 星新一ショートショートBookほしのはじまり―決定版 星新一ショートショート


著者:星 新一

販売元:角川書店
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小説「きのうの世界」恩田 陸

今度はどこへ連れて行ってくれるのか?

塔と水路に特色のある、地方の町。
東京からやって来た男性が、刺殺体で発見される。
凶器も、犯人もわからないまま。
被害者は、なぜこの町にやって来たのか?
犯人は?
町に建てられた、3本の塔の秘密とは?


第140回直木賞候補作。
残念ながら、直木賞には至りませんでしたが、候補作だけあって、読み応えは十分でした。
恩田先生らしい、どこに連れて行かれるかわからない展開が面白く、最後まで一気に読めました。

ラストはつじつま合わせになってしまっている所があり、腑に落ちない点もありました。
しかし、読んでいる最中は、本当に面白い!

ミステリーかと思わせる舞台から、とんでもない方向に進んでいきます。
突然、今まで見ていた風景が、全く違う姿を現すのです。
背筋が寒くなりました。

結末がおかしくったって、そんなのは小さなことです。

きのうの世界Bookきのうの世界

著者:恩田 陸
販売元:講談社
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小説「神と野獣の日」松本清張

松本清張おそるべし

外国から核ミサイルが、東京へ向けて誤発射されたという報告が。
残された時間は、わずか数十分。
政府は苦渋の決断の末、その事実を発表することに…。


松本清張によるSF的小説。
社会派の推理小説作家の大御所が、このような作品を発表されていることに、まず驚きました。
そして、それ以上に驚いたのが、その内容。
面白い!

さすがというべきか、政府や人々の翻弄される姿が、とてもリアルで、本当に核兵器が飛んできたら、こんな感じの騒ぎになるかもしれない、と思わされました。
ブラックユーモアも随所に効いていて、乾いた笑いを誘います。
安全圏に到達したとたんに、圧力団体を気にする政治家や、地下に逃げ込もうとする人々の滑稽さが、何ともいえません。

でも、実際、核兵器から逃げられないとわかったら…自分の精神がどうなってしまうのか、想像もつきません。
醜態は晒したくないけれど…無理だろうなあ。


神と野獣の日 (角川文庫)Book神と野獣の日 (角川文庫)


著者:松本 清張

販売元:角川グループパブリッシング
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小説「虐殺器官」伊藤計劃

自由とは?

テロと、核戦争ののち、暴動と虐殺が多発するようになった近未来の物語。
主人公は、暴動を抑えるために首謀者を暗殺する、アメリカの特殊部隊の大尉です。
彼は任務をこなすうち、世界各地で起きている暴動に、常にかかわっている謎の人物の存在に気が付きます。
いったい何者なのか?意図的に暴動、虐殺を誘発することなど、出来るのでしょうか…?


日本人の作品ですが、小説の舞台がアメリカということもあって、海外のSF大作!といった印象です。
言葉の定義や、思考、世界の描写が緻密で、「知的な」SFを好む方々にとっては、極上の作品になることでしょう。

もっとも、私には難しすぎて、3回くらい意識が飛んだのですが…。


それでも、展開がダイナミックで、謎の盛り込み方も巧みなので、楽しい読書を満喫できました。
オチもお気に入りです。

悪い意味ではないのですが、あのオチは、アメリカ人には書けないだろうなあ…。


虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)Book虐殺器官 (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)


著者:伊藤 計劃

販売元:早川書房
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小説「窓のあちら側」新井素子

少し変わったSF短編集!

SF作家・新井素子先生の代表的作品に、未収録作品を加えた短編集です。
未収録作品の文字と、印象深かった「グリーン・レクイエム」に惹かれて、手に取りました。

「グリーン・レクイエム」
…以前に読んだのは10年位前です。
”光合成をする人間”と、”感化されて植物たちが意思を持ち始める”という設定に度肝を抜かれました。
前のめりになりながら読んだのを憶えています。
この短編集には収録されていませんが、変則型の続編「緑幻想」も面白かったなー。

「ネプチューン」
”時震”って、「ズッコケ三人組」でありましたねー。
関係ないけれど。
若者三者三様の考え方、発想が魅力的。
個人的には由布子の考え方に共感を覚えます。
「緑幻想」にも出てくる考え方ですが、
昔の地球の大気の成分を変えてしまった植物だって自然破壊だ、という発想は、ものすごく好きです。

「雨の降る星 遠い夢」
素子先生の文章が生き生きとしている作品。
テンションの高い主人公が楽しいです。
SF要素満載の展開もたまりません。

「大きなくすの木の下で」
少し変わった悪魔の願い事パターン。
どっちに転ぶのかわからないところが面白かったです。
薄ら寒い読後感がナイス。


本の最後に、著作リストがあったのも、嬉しかったです。
新井素子先生の作品は、ライトノベル系のものも多く、探すのに苦労するので。
まだ読んでいない作品がたくさんあって、楽しみが増えました。


窓のあちら側 (ふしぎ文学館)Book窓のあちら側 (ふしぎ文学館)


著者:新井 素子

販売元:出版芸術社
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小説「マイノリティ・リポート―ディック作品集」フィリップ・K・ディック

「トータル・リコール」の原作もあるよ

映画「マイノリティ・リポート」の原作を含む
フィリップ・K・ディックのSF短編集です。
映画が面白かったのでチェックしてみました。

読んでみて驚いたのは、原作と映画の設定がだいぶ違うことです。
短編ということもあるのでしょうが、ハリウッド映画は大胆ですねー。

もっとも、映画も小説も面白いことには変わりありません。
別の作品として楽しむことが出来ますし、お互いを比べて
楽しむことも出来ます。

ちなみに映画「トータル・リコール」の原作「追憶売ります」も
収録されていますが、こちらも全然違います。
「マイノリティ・リポート」以上に違いが多く、
読んでいて「トータル・リコール」の原作だとは気が付かなかった
ほどです。
(同じくどちらも面白いのですが)

その他、気に入った作品は
「ジェイムズ・P・クロウ」と「世界をわが手に」。
どちらもオチにひねりが効いています。

ロボットや地球のミニチュア。
魅力的な設定がたまらなく楽しいです。


マイノリティ・リポート―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)Bookマイノリティ・リポート―ディック作品集 (ハヤカワ文庫SF)


著者:フィリップ・K. ディック

販売元:早川書房
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小説「MM9」山本弘

大胆不敵な怪獣小説!

怪獣小説です。
これはすごい!

怪獣が頻繁に出没する世の中で、それを予測分析し、対処しようとする気象庁特異生物対策部の活躍を描いた作品です。

いやー、怪獣ですよ。
心が躍ります。
もう、そんな作品を小説で読めるだけで嬉しいというのに、SFの要素もしっかりと用意されています。
というか、後半の飛躍は期待をよい意味で裏切ってくれました。

気持ちのよいSFは、圧倒的な世界観で盛り上げてくれます。
その感覚が非常に好きなのですが、この小説もそれを存分に感じさせてくれるものがありました。
多少無茶ではありますが(怪獣が出現する時点で無茶ですが)、怪獣の存在を科学的に説明してくれるのです。

空想科学読本にもありましたが、何10メートルもある怪獣の身体を、筋肉では支えきれないのです。
しかし、この小説ではある理論を提唱することで、その問題を解決してしまいます。
もう、この設定だけで充分楽しいです。
理科好きにはたまらないのではないでしょうか。

怪獣のいる世界を存分に堪能しました。
SF、怪獣…このキーワードに食指を動かされる方は是非。

ここの所、よい作品につづけて出会えているので、嬉しい限りです。


MM9BookMM9


著者:山本 弘

販売元:東京創元社
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小説「終末のフール」伊坂 幸太郎

生き残るって…

小惑星が8年後に、地球に衝突するのだそうです。
大騒ぎ!


…そしてそして大混乱ののち、5年が経過。
この頃には、混乱も少し落ち着きました。
でも、小惑星の対策がうまく行った様子はありません。


っていうか、普通に生きている人たちにはどうしようもありません。
日々を懸命に生きるしかないのです。


…そんな世界の、仙台を舞台にした、普通の人々のお話。

ひとりひとりのエピソードが短編になっていて、少しずつ重なり合います。

深刻な世界の話ですが、文章が軽めに書かれていて、読みやすいです。
それぞれの人が抱えている問題は、やっぱり重いのですが。

でも、人類があと3年で滅びてしまうことになっても、マイペースに生きていく姿を見るのは、なんだか心強いです。


本文ラスト手前の引用です。

「じたばたして、足掻いて、もがいて。生き残るのってそういうのだよ、きっとさ」

8人のエピソードを通して、確かにそうかもしれない、と思いました。

そして、笑う部分の方が多かった、この本の最後2ページで、思い切り泣かされました。


世界破滅モノはもともと好きなのですが、SF以外の、こういう普通の人に焦点を当てた作品も面白いですね。
よい作品に出会えて、嬉しかったです。


…小惑星が、地球に落ちてきませんように。

もし落ちてきたら、少しは足掻いてみようかなあ…。

でも、混乱のさなかに、あっさり死んじゃいそうだなあ…。

終末のフールBook終末のフール

著者:伊坂 幸太郎
販売元:集英社
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