小説「名もなき毒」宮部みゆき
「普通」の人の持つ毒
「誰か」の続編です。
大手企業で社内報の編集に携わる主人公は、アルバイト女性の雇用に関するトラブルに巻き込まれます。
解決するために訪れた先で、連続無差別毒殺事件へと関わることに…。
普通の人が抱える闇。
誰しもが感じる、社会への矛盾。
日常の、普通の人たちの、普通の考え、気持ち。
そういったものを書いたとき、一番心に響く語り部が、この作者だと私は思います。
そういう意味で、このシリーズは宮部作品の中で異色でもあります。
なぜなら、主人公の境遇が普通ではない。
大企業の会長の娘婿となった彼は、普通の感覚を持ちながらも、異常な環境を生きています。
なにより、全能とも言っても過言ではない、義父の会長がいます。
どんなごたごたが起きたって、最後はどうにかしてくれる絶対的な存在なのです。
前作を読んだとき、この点が違和感でした。
しかし本作は、この会長の言葉に一番共感を覚えました。
「禁忌を犯してふるわれる権力には、対抗する策がない」
無力感。
それでも、たくさんのエピソードを絡めて、丁寧に答えを教えてくれます。
明るい物語ではないのですが、読み進まずにはいられませんでした。
そして、読後感は悪くありません。
![]() | 名もなき毒
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