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小説「名残り火~てのひらの闇2」藤原伊織

ただただ惜しい

今年5月に亡くなった、藤原伊織の遺作。

「てのひらの闇」の続編です。


「てのひらの闇」の主人公と言えば、藤原作品中で、最も常識人であり、且つ最も凶暴な男、堀江雅之。

他の登場人物も個性的です。

相棒ともいうべき切れ者のキャリアウーマン大原。

投げやりなバー経営者のナミちゃんとマイク。

魅力的な登場人物がたくさん登場し、アクションも迫力があって、なるほど、続編が出るのもうなずけます。

藤原伊織の作品の中でも、初のシリーズ化。

それが遺作となってしまうとは、残念でなりません。


今回の舞台は流通業とコンビニ業界でした。

藤原伊織の作品は、先端を行く業界の裏事情を詳しく紹介し、それを絡めた事件を描くのが特徴です。

しかし残念ながら、今回の作品はあまり業界の事情がストーリーに絡んでいません。

興味深いエピソードは紹介されるのですが、直接話に影響せず、分離しています。


また、登場人物のうち、重要なポイントを占めている人物の描写が足りておらず、中途半端な感じがします。


そして、堀江の最大の見せ場であった、アクションが今回はほとんどありません。


ただ、これらの問題は本作品が遺作であり、加筆修正が最後まで行なわれなかったことに理由があるようです。

惜しいです。

最後まで直しが完了していたら、もっともっと面白いものになった気がするのです。

それだけの力を感じる作品です。


また、これまでの作品で毎回繰り返され、マンネリとも言えた要素…ヤクザ関係など…が少なくなっています。

作者自身、これまでとは違ったものを書こうとしていたように感じます。

それなのに。


ちなみに、前作で活躍したメンバーは今回も光っています。

これまでの作品を楽しんだ人にとっては、充分に楽しめる内容にと言えるでしょう。




藤原作品のこれから。

このシリーズが更に続いたとしたら…。

登場人物達の今後を知ることが出来たら…。

全てが叶わぬ夢となってしまいました。

ただ、ただ、惜しいです。


先生のご冥福をお祈りし、これまでに発表された作品を、愛読し続けたいと思います。

寝る間も惜しんでページをめくったあの時間を、本当にありがとうございました。

そして、これからも。


名残り火 (てのひらの闇 (2))Book名残り火 (てのひらの闇 (2))


著者:藤原 伊織

販売元:文芸春秋
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